6.望郷の夢の輝き 〈宮城県気仙沼市〉

宮城県気仙沼市のシンボルである安波山は、「航海の安全と大漁を祈願する」ことの由来から名づけられた山で、気仙沼の港を一望することが出来る名所です。

風水で、連なる山並みを「龍脈」と呼び、安波山は、まさに龍が舞い降りてきたような姿かたちをしているため、この地を見守る龍たちが住んでいるという古い言い伝えがありました。

震災から一年が経った、ある春の日のこと。スターリィマンは、悲しそうな龍の声に導かれて、安波山を訪れました。頂上に着くと、ざぁーざぁーと突風が吹き荒れ、風の中から二匹の龍が現れました。

 「スターリィマン、よく来てくれました。私たちはこの山に棲んでいる双子の龍です。昔々から、この町の人々の幸福と繁栄を願って、航海の無事を見守り、大漁の恵みの風を送り続けておりました。これまでにも何度か大きな地震や津波がこの町を襲い、立ちはだかる困難を何とか乗り越えてまいりました。しかし、今回ばかりはもうだめだと思いました。最初に押し寄せた津波によって、港の入り口にあった大量の燃油タンクが破壊され、重油で真っ黒に埋め尽くされた気仙沼湾の海は、あっという間に火の海に! まるで地獄のような光景でした。

 何とか鎮めようと私たちは必死になりましたが、火の勢いは衰えるどころか、どんどん燃え広がって、ついには、気仙沼大島まで燃え移りました。救助に向かおうとする人々も、船が流されて大島に渡れずに、なすすべもなく、ただただ大島のみんなの無事を祈ることしか出来なかったのです。その後、気仙沼大島は一週間も燃え続け、亀山の頂上にある大島神社の前でようやく火が収まりました。津波や火災で何もかも失い、ここから見える景色はすっかり一変してしまいました」

気仙沼を守る龍の風 

 「みんな一丸となって、かつての生活を取り戻そうと必死で頑張っていますが、何か問題が解決したと思ったら、また一つまた一つと問題が次々に増えるばかり。段々と心も体も悲鳴を上げ始めています。それに、立場が違えば、それぞれ考え方や価値観は様々で、なかなか一筋縄にはいきません」

 「中には、撤去されていく瓦礫を、愛おしく思うものもいました。撤去しなければ、復興は遠のくことは分かっている。けど、元々あの瓦礫は、誰かの大切な家だったり、思い出がつまった宝物だった。それがどんどん消えていくことが悲しい、と涙を流すのです」

 「あぁ! 目を閉じると浮かんでくる。風になびく大漁旗、船のエンジン音、市場の競り合う声。すべてが輝いていたあの頃……また気仙沼のみんなの心がひとつになれるように! 私たちは、天と地と人々の心をつなぐ風になりたいのです」

スターリィマンは、祈りをこめた風船を龍の身体にしっかりしっかりと巻き付けると、龍たちは、竜巻のごとく、上空を目指し駆け抜けて行きました。すると、目が眩むほど金色に輝く夕日が、気仙沼の港を染めて行きました。

気仙沼の港を照らす沈まない太陽。これからの未来を創る夢の輝き。さぁ! 10年後、20年後、100年後、1000年後の輝くふるさとのために、もう一度、みんなと夢を叶えていこう!

龍たちの力強い追い風に吹かれながら、スターリィマンはまた次の場所へと旅立って行きました。

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