3.誇りは輝く光になって 〈福島県会津若松市〉

2011年3月のはじめ、福島県会津若松市の鶴ヶ城では、 天守閣の屋根を赤瓦に変える工事が進められていました。600年余りの歴史を持つこの城を、幕末の戊申戦争当時の姿に再建し、会津の心を、誇りを、次の世代へとつないでいくために……。

天守閣のてっぺんで、ずっと会津の歴史を見守ってきた鯱たちは、今日もふるさとの町並みを誇らしげに見つめていました。すると、毎年この時期に、越冬地の猪苗代湖から北へ向かう顔なじみの白鳥たちが、鯱たちに元気に声をかけました。

 「あれ? 鯱さんたち、何だかいつもより輝いて見えるなぁ」  

 「へへへ。よくぞ気づいてくださいました! 実はですね、私たち、赤瓦に葺き替えて頂いているんです」  

 「それは、それは! どおりで輝いて見えるはずだぁ!」

 「赤瓦の鶴ヶ城って、何だかなつかしくってあったかいね」  

 「ありがとうございます! 白鳥さん。有り難きお言葉。誠に光栄でございます」  

 「今年のお花見は、そりゃぁもう見事な風景だろうね。赤瓦の鶴ヶ城にお堀の満開の桜。いやぁ最高だね! 会津の町が、一段と華やかになるね!」  「えぇ、もう待ち遠しくって、待ち遠しくって。桜さん、早く咲いてくださいって、毎日毎日お頼みしているのですよ」  

 「そっか。本当にめでたい! 本当にうれしいね! また冬に会う時は、お花見の様子をゆっくりと聴かせてね」  

 「えぇ、もちろんですとも! では、白鳥さんたちお気をつけて! どうかお達者で!」

 「楽しみにしているよ! 鯱さんたちも元気でね!」

こうして、三月のはじめ。天守閣の鯱たちと白鳥たちは、喜びいっぱいの笑顔で別れました。それから10日余り過ぎた、3月11日にあの東日本大震災が起きたのです。

受け継がれる会津の誇り

 「会津のみんなは無事か!? こんな大地震は、この城が建ってから初めての事だ」

鯱が心配そうに会津の町を見渡していると東の方から、カラスたちが息を切らせながら飛んできました。

 「カァ! カァ! 大変だ、大変だ! 沿岸部を大津波が襲って、大変だ!!」

 「何て事だ。あそこには恐ろしいものがあるというのに! みんなみんなどうか無事でありますように……」

鯱は、福島のみんなをお守りください、お守りくださいと、毎晩、全身全霊をかけて祈り続けました。 

例年より遅い四月の下旬頃。鶴ヶ城の桜の花は、やっと開き始めました。ずっとずっと待ちわびていた桜の季節。しかし、会津の町は桜の花を愛でるゆとりはありませんでした。

なぜなら、福島県の浜通りの方からたくさんの人たちが、会津へ避難して来たため、会津の人たちは、避難して来られた方々のために 精一杯尽くしていたのでした。

美しく桜が咲き誇る満月の夜。 鯱の願いを叶えるために、スターリィマンがやって来ました。 静まりかえった鶴ヶ城に、鯱の声が切なく響き渡りました。

 「私たち鯱は、蒲生のお殿様が天守閣をお建てになった時から、戦乱の世も、移り変わる時代の波にもまれようとも、決して志を失う事なく生きる、会津の皆々様の生き様を、ただただ見守りながら、共に生きてまいりました」

 「なにが起こるかわからない。本当に一寸先は闇の世の中です。しかし、会津の誠心は、決して汚れる事はございません。どんなことにも義を持って、最後まで尽くすこと。それが我がふるさと会津の誇りなんです。どうか、今、先人から脈々と受け継がれてきた会津の心を、この町の人々にお伝えください」

スターリィマンが、会津の町に向かって風船を放つと、 鯱の祈りと共に、天高く舞い上がって行きました。

先人たちの遙かなる想いに育まれ

喜びや悲しみを見守り続けてきたこの風景

観る人の過去と未来をつなぎ

桜の花明かり さらに今を照らしてゆく

花びらはふるさとの未来に

まばゆい光を運んでゆく

いつまでも会津の誇りを いつまでも心の支えに

明るく照らせ 桜の花明かり

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